株式会社ゆこゆこ

生活者目線で捉え直した
”温泉・温泉宿のプロ”という企業価値の訴求

Outline

概要

株式会社ゆこゆこ(以下、「ゆこゆこ」)は温泉宿に特化した宿泊予約サービスを提供している企業です。
創業期から宿の情報を掲載した会員誌を送付し、電話で注文を受けるサービスを提供していましたが、現在はOTA(Online Travel Agent)の機能も有し、利用者はこれまでのサービスに加えてWebでも情報を探したり予約を取ったりすることができます。また、ゆこゆこは社員の約9割が温泉ソムリエの資格を持ち、各エリアの営業担当者が日本全国の宿泊施設へ直接足を運んで宿の魅力を発掘するなど、宿のみならず地域全体の活性化にも貢献しています。

そんな中、ゆこゆこの展開する電話予約サービスをより広く知っていただくことで新規顧客の獲得と既存顧客のエンゲージメントを高めたい、というPR活動に関するご相談をまずインテグレートにいただきました。

しかし、その活動を進めていく中で、コロナ禍が明けた旅行需要の高まりなどの社会環境の変化もあり、単に電話予約などのサービスだけを知っていただくのではなく、もっと根本的なゆこゆこの価値を伝えるための取り組みが必要ではないかという話があがってきました。
現在のOTAの市場は、「どのサイトで予約するか」というこだわりからではなく、価格比較やポイントの汎用性によって予約サイトを選ぶ生活者が多い傾向にあります。また、圧倒的な量の広告投下によるSOV(Share of Voice)によって行動を囲い込む動きも多く、差別化の難易度が高い市場です。
こうした環境下で改めて“お宿を利用するお客様の目線”でゆこゆこの価値を明らかにするとともに、生活者に広く知っていただくべく、取り組みをはじめました。

Process

戦略/実行

本プロジェクトでは、ゆこゆこの真の価値の明文化にはじまり、それをベースとしたコミュニケーション戦略立案から具体的な情報発信までを一気通貫でサポートしています。

 

サービスの価値を再定義する

まずは「伝えるべきゆこゆこの価値は何か」を再定義すべく、インテグレートからゆこゆこをご愛顧いただいている方に対し、温泉宿の利用についてどんな価値観を持っているのか、旅行の企画前から実際に訪問するまでの流れはどのようなものか……などをヒアリングしました。その中で、彼らがゆこゆこにどんな価値を感じて利用しているのかを引き出し、その価値の構造化を行いました。また、その価値を形づくっている「ゆこゆこの強み」を言語化することでどのようなバリューチェーンが起きて価値提供につながっているのかを明確にしました。

 

一方で、このリサーチの中で、旅行の記憶の大半は旅先での思い出が占めることが多いため、その最初のプロセスである「旅行予約する行為」とそれによって生まれたはずの「そのお宿を選んだきっかけ(=ゆこゆこで選んでよかった)」という体験自体が記憶に残ることなく宿の評価に留まってしまう、ということもわかってきました。
その結果、ゆこゆこを利用して良いお宿を見つけることができた方々も、次回利用の際には検索行動時の圧倒的なデジタル広告の投下による情報リーチも相まって、他のOTAを横並びに比較して検討が行われてしまうということが起きていました。これがゆこゆこの顧客獲得にとって大きなボトルネックだったのです。

これらの方々の意識に対し、利用時に享受したはずの「ゆこゆこの価値」を改めて顕在化し、「温泉宿に行きたくなったら、まず、ゆこゆこ」というパーセプションをしっかりと形成するとともに、ゆこゆこで宿探し・予約をする体験への期待感を醸成していくことが明確な課題としてみえてきました。
そこで、どのような生活者に、どのような価値を提供して、彼らがどのようなベネフィットを享受できるのかということをゆこゆこの皆さま方と定義(ブランド価値のモデル化)し、それらをベースとした情報戦略の立案・実行へと繋がっていきました。

 

再定義した価値を伝える

コミュニケーション活動のフェーズでは、どのような情報に触れ、どのような体験をしていただければ、生活者の間で「温泉宿に行きたくなったら、まず、ゆこゆこ」というパーセプションに至るのかを考えました。

そこで、ゆこゆこは“温泉宿に行きたいときに相談したくなる相手”=“温泉・温泉宿のプロである”ということを伝えるべくPR活動を展開。「温泉の日(9月9日)」や「いい風呂の日(11月26日)」などのきっかけをうまく活用しながら生活者が温泉に行きたくなるような話題づくりを仕掛けていきました。さらにその話題も、他の企業が発信したことのないようなユニークさや、ゆこゆこだからこそ知りえた“プロ”ならではの視点にこだわりました。
「細かすぎる温泉実態調査」と題したリサーチでは、生活者が温泉に行く頻度や宿を選ぶ時のポイント、さらにはお湯に浸かったときに出てしまう一言など、見た人が自身の温泉経験を振り返ったり追体験したりできるような設計にしたことが功を奏し、調査結果がTV 番組で取り上げられただけでなく、スタジオトークでのテーマにも使われるなど「話題づくり」を体現することができました。

 

また、温泉宿のサービスやおもてなしの中で特に良かったものをゆこゆこが宿泊者目線で評価・表彰するとともに、専門家とともにまとめた宿のトレンドも発信。ゆこゆこがこれまで蓄積してきた“温泉・温泉宿のプロ”としての知見を、生活者が活用しやすいかたちに言い換えることでより多くの方に知っていただきました。

このような取り組みを経て、旅行需要の高まりとともに電話予約サービスやWEBサイトでの予約数も盛り上がりを見せています。お取引先の方々や社員のご家族をはじめとした各所から多くの反響があっただけでなく、お客様からも「ゆこゆこで予約したい」という声があったとのことです。予約件数増加という成果や企業の知名度向上につながる効果があったことで、一連の活動の力を実感したとの声をいただいております。