帝人株式会社

食品領域への新規参入から市場成長へ
機能性素材BtoBtoCマーケティングの実践

Outline

概要

異業種への挑戦!帝人の本気の想いと「スーパー大麦バーリーマックス」との出会い

総合素材メーカーである帝人株式会社(以下、「帝人」)より、同社が異業種である食品領域へ参入する際の支援プロジェクト。
帝人は、2013年に新事業開発本部内に新たなビジネスを始めるための提携推進班を作り、そこで着目したのが機能性食品素材でした。その中でも最も注目していたテーマが「腸内フローラの改善」。腸内フローラの研究は世界中で研究が高まるとともに、未解明部分の多いことへの将来性を感じ腸内フローラ改善に効く食品素材の探索を開始いたしました。
帝人担当者が2014年8~12月、腸内フローラ改善に効果的な素材を探すためヨーロッパ、米国西海岸など多数回った結果、オーストラリアでレジスタントスターチを豊富に含むバーリーマックス(これが、今のスーパー大麦バーリーマックス※)と出会います。
帝人は、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)がバーリーマックス商業化のために設立したヘルシーグレーン社(バーリーマックスの食によるエビデンスも所持)とバーリーマックスの独占共同開発契約を締結し日本での独占販売権を取得しました。

実際に素材販売をしていくタイミングとなって、機能性食品にエビデンスは絶対に必要である一方、エビデンスだけでは売れないということも分かっていたため、日本でどのように機能性素材バーリーマックスを売ったらよいのか悩んでいました。そこで、食品素材領域の知見が深く、導入からコミュニケーションの実施までトータルで支援が可能なインテグレートへご相談を頂きました。

※スーパー大麦バーリーマックスとは
オーストラリアの研究機関であるオーストラリア連邦科学産業機構が開発した非遺伝子組み換え大麦で、一般の大麦に比べて2倍の食物繊維、4倍のレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を含む機能性大麦

Process

戦略/実行

ひとつのチームとして共創。ビジネス全体像の設計から機能性素材B to B to Cマーケティング戦略の実践

本プロジェクトの初動時は、帝人内で提携推進班を設立したばかりでメンバーも少なく、また異業種への初参入で機能性素材ビジネスにおけるノウハウがまだ少なかったことも踏まえ、インテグレートが機能性素材ビジネス戦略・計画から、マーケティング/セールス/エビデンス計画/サプライチェーン計画などビジネス全体像の設計をサポートしました。

そのビジネス全体戦略を踏まえ、スーパー大麦バーリーマックスの素材展開・販売に向けて実行した取り組みがインテグレートの真骨頂の一つである『機能性素材B to B to Cマーケティング戦略』でした。
機能性素材B to B to Cマーケティング戦略とは、「素材(原料)ベースのマーケティングストーリーを開発し、PRにより市場創造を図り食品メーカーへの営業活動を連動させる」取組みです。素材メーカーが直接生活者へその素材の価値となるメッセージ・ストーリーを届け認知・理解を図ると共に、採用された食品メーカーの商品でも同様のメッセージを訴求することで、生活者へ統一したメッセージとコミュニケーションを図り、その素材のブランド価値向上と市場定着、拡大に繋げる戦略です。

 

機能性素材B to B to Cマーケティング戦略3つのポイント

その機能性素材のブランド価値を高め市場拡大・定着を図るために必要になる要素が、
①素材ストーリーの開発
②エビデンスの取得、PR/プロモーション
③B to Bビジネス/営業連携
になります。
スーパー大麦バーリーマックスにおいても、まさにこの①~③を実施しました。

1) 大腸の奥まで届くことによる優位性をストーリー化
世界中で腸内フローラに対する研究が進む中、注目が高まっていたのが腸内細菌のエサとなる「プレバイオ(水溶性食物繊維など)」でした。プレバイオを摂取することにより、自分の中の腸内細菌のエサになり短鎖脂肪酸を産生することで全身の健康予防・維持へ繋がることへの研究や注目が高まっていました。

ただし、腸内細菌は大腸の奥に多く生息しているため、ここへエサを届ける必要がありますが、奥に届く前に消化されてしまいなかなか届けるのが難しいのが現状でした。
しかし、スーパー大麦は、食物繊維の量が通常の大麦の2倍。更に、大麦に多いβ-グルカン以外にフルクタン、そして直腸やS状結腸など大腸の奥まで届くレジスタントスターチが大麦の4倍も含まれています。

このスーパー大麦の持つ素材特徴と世の中で研究や注目が高まる「腸内フローラ:プレバイオにより短鎖脂肪酸を産生することでの全身の健康」というウェルネストレンドを叶える素材として、価値ストーリーを設計し今までの腸活とは異なる価値訴求を行いました。

2)市場創造に向けた生活者へのPR活動の実行
まずは、機能に対するエビデンスが重要になるため、帝人と大学との共同試験を実施し、便通に関する優位性エビデンスを取得。また、これからの啓発活動を目的とし複数の研究者・有識者の方々とスーパー大麦を研究/発信する機関としての研究会を設立しました。

また、生活者へのPR活動に向けて、生活者が手に取れる商品や体験できる場所がなければメディアに取り上げられることが難しいということを踏まえ、素材メーカーでありながら自社商品「スーパー大麦 グラノーラ」を開発/販売。さらに、直接体験(食べられる場)することができ、取材先にもなるカフェやレストランでのスーパー大麦のメニュー化などのコンテンツを準備し、業界内、そして生活者へ向けてのPR活動を実施しました。

3)食品メーカー・流通への直接営業の実施
さらに、帝人内でまだ営業リソースが整っていなかったことも踏まえ、インテグレートがリレーションのある食品メーカー・流通へ、今回策定した素材ストーリーと市場創造に向けたPR活動を踏まえた営業資料を整え、直接、ストーリー提案型営業活動を実施しました。

結果、国内での素材供給量を上回る大ヒットへ!!
2016年春から本格的な素材営業、メディアへのPR活動を開始しました。
それから半年後の秋、フジテレビの特番で大々的に長尺でスーパー大麦が紹介されました。その時は自社商品のスーパー大麦グラノーラ1品がECで販売されているだけでしたが、放送された瞬間に当初製造分の1万袋がすぐ売り切れ、さらに増産した4万袋もすぐに売り切れてしまいました。
ちょうどそのタイミングで、イトーヨーカドーへの営業活動を進めており、すでにイトーヨーカドーのオムニ7(EC)でスーパー大麦グラノーラを販売していましたが、その反響のすごさを見てスーパー大麦をイトーヨーカドーの指定食材とし2017年春には数十メーカーから商品が発売、スーパー大麦の売場ができるまでに発展しました。また、シリアルメーカーへも生活者から「スーパー大麦商品ありますか?」との問い合わせが多くあったそうで、大手シリアルメーカーが普通では考えられない数ヵ月というスピードで商品化をすることとなりました。

まさに、機能性素材B to B to Cマーケティング戦略として、対to C(生活者)、対to B(食品メーカー、流通)が立体的に統合され市場創造された瞬間でした。

 

スーパー大麦は、その年の「Yahoo!検索大賞2016 食品部門賞」を受賞。この受賞をまた一つのニュース/きっかけとして活用し、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でも長尺で放送していただき、さらに話題、販売加速へと繋がりました。
その結果、日本国内で供給できる素材の量を上回ってしまい、一時期原料供給ができない状態にまで及びました。
その後、すぐに安定供給ができるように素材量を整えていただき、さらにファミリーマートの「おむすび」をはじめとする複数商品やPB、他NB商品にも採用が広がり、スーパー大麦素材の成長へと繋がっていきました。